VOL.7

番外編と致しまして
「なっかん童話」
(なっかんとは、Raider Kou の別名である)


は〜い!!みなさ〜ん!!大好きな「なっかんのお話」ですよ〜
さて、今回はいつもと少し趣向を変えまして、なっかんのお話 番外編と致しまして
「なっかん童話」を披露させていただきます。
ただし、「童話」といいましてもその定義がどこにあるのか解らなかったので、あくまでもこの童話は僕のイメージする童話ですのであしからず…
それでは、なっかん童話『旅人達』のはじまり、はじまり〜

「アルカディア」
古代ギリシャのペロポネソス半島にあった地。牧歌的な楽園にたとえられていたその地は古代ギリシャ人に『アルカディア』と呼ばれていた。

『旅人達』

むかしむかしギリシャという国を旅する二人の日本人の兄弟がいました。
元口という名の二人の兄弟は大きな馬に乗って旅をしていました。
ある日 元口兄弟が砂漠を歩いているとき、一人の男が倒れているのを見つけました。
すぐさま元口兄弟は男を木陰まで運んで行き、水を与えてやりました。 意識が戻った男は自分は日本人で山葉という名前だと言いました。
山葉は助けてくれた元口兄弟に何かお礼がしたいと言いましたが、山葉は元口兄弟と同じく旅人であったため、馬以外は何の手持ちもありませんでした。
そこで山葉は一緒に旅をさせてもらうことで二人のお役に立ちたいと言ったのでした。

「ところで元口お兄さん、お二人はどこか目的地があって旅をしているのですか?」

と山葉は尋ねました。
すると元口兄は「私達は長年、ペロポネソス半島にあるというアルカディアという楽園を探して旅を続けているのですよ。 
そこにはいろんな夢を叶えてくれる神様がいると言われている理想郷らしいのです。」
その話を聞いた山葉は「その理想郷のことなら私の知人の仙人がとても詳しいので、まずはその仙人の所まで行きましょう。」と言って元口兄弟と共に旅を始めたのでした。

旅人達の旅は続きます。

しばらくすると三人は大きな湖にさしかかりました。
対岸が見えない程大きなその湖は、渡るのに大きな船が必要です。しかし辺りを見回しても一隻も船はありません。そこで三人は船が通るのを待つことにしました。

二日目の早朝  湖の朝もやの中から「ボォー!!」という汽笛と共に大きな船が姿を現しました。
船の上からは二人の親子がこちらを見ていました。
元口弟が岸から大声でその親子に叫びました。
「私達は旅人です。どうか対岸まで私達を乗せてもらえませんか?」
すると父親が「タダでは乗せることはできない。しかし私達の探しているものを一緒に探すならこの船に乗せてやろう。」と言いました。
一緒に探し物をすることを条件に元口兄弟と山葉は船に乗せてもらいました。

船乗りの親子はB・エムルグという名のドイツ人で、みんなからはビエムと呼ばれていました。
息子のベック・エムルグの話によると彼等は10年前にこの湖で命を落とした祖母の形見であるペンダントを探し続けていると言いました。
父親のベル・エムルグの操縦する船は祖母が乗っていた船が難破した場所まできました。
素潜りが得意という山葉が真っ先に湖に飛び込みました。
1分…2分…3分…と時間が経つが山葉は潜ったままです。
7分…10分…15分… さすがに心配になった元口の兄が湖に飛び込もうとしたその時です。
バッシャ!という音とともに右手を高く突き上げて山葉が水面から飛び出しました!
彼の右手には太陽の光に照らされてキラキラと七色に輝くペンダントが握られていたのでした。
ビエムの祖母の形見が見つかったことで旅人達は無事に湖を渡りきることができました。
船を降りるときに息子のビエムが自分の馬を引き連れて旅人達の前に立ちはだかりました。

「みなさんのおかげでやっと祖母の形見を見つけることができました。本当にありがとうございました。そこでお願いがあります。よければ私もあなた達と共に旅をさせてもらえますか?」
すると元口兄は「ですが、お父様は一緒に来られないのですか?」と聞き返したのでした。
するとビエムは「父は命が尽きるまでこの祖母の眠る湖で祖母の思い出と共に生きると言っています。」 
「そうですか、わかりました。私達も旅を続けるのには信頼できる仲間が必要だとっています。ぜひ一緒に旅をしましょう。」

こうしてビエムという新しい仲間が加わったのでした。


旅人達の旅は続きます。


山葉の案内で旅人達は高くて険しい山へとやってきました。
この山の頂に山葉の知り合いという仙人が住んでいるというのです。

その険しい山は旅人達の気力と体力を奪うのでした。
そして丸3日かかって旅人達は頂へとたどり着きました。
山の頂には中国風の建物が建っていました。
山葉は建物の外から大声で「哈仙人!」と呼びました。
すると建物の中から一人の老人が出てきました。
「これはこれは山葉君、よくぞ尋ねてくださった。久しぶりじゃのぉ」
「お久しぶりです、仙人。 実は今日、仙人にお聞きしたいことがあってここに来ました。」

「以前仙人が私に話してくれた、旅人の理想郷“アルカディア”の事を詳しく教えて頂きたいのです。 実は今ここにいる者全員でアルカディアを目指しているのです。」
仙人は遠くの山を見つめながら話し出した「旅人達の理想郷と呼ばれるアルカディアか… そういえばそんな話をしたことがあったかいの。
 じゃが、アルカディアは遠いぞ、いや、遠いというよりあそこには澄んだ心の持ち主にしかたどり着けん国なんじゃ。」
「私達では無理でしょうか?」
と元口兄は仙人に聞き返した。
「いや、どんな人間でもいつかはたどり着けるのじゃ。じゃが人によってはすぐに着ける者もおれば、五年後、十年後にやっとたどり着く者もおる。
つまり旅を続けることで人の心は少しづつ美しく澄んでいくのじゃ。 元口君といったかいな?君がリーダーとなってみんなを引っ張って行きなさい。
アルカディアへは夜空の星の中で一番光輝く星の方角を目指せばいずれ着けるはずじゃ。」

「それから元口君、一つワシの頼みを聞いてくれんかのお、ワシには一人の孫娘がおる。孫娘は生まれてから一度もこの山を下りたことがないんじゃ。
あやつも二十歳を過ぎよったから、そろそろ外の世界を見せてやりたいんじゃ。じゃがワシはこの山を離れるわけはいかんので、ワシのかわりに孫娘を一緒に連れていってくれんかの。
年寄りのわがままじゃが、頼まれてもらえんか。」
元口は少し考えてから「わかりました。娘さんを預からせてもらいます。」と答えた。

仙人は孫娘を呼び寄せて旅人達に紹介しました。
「みなさん、はじめまして! わたし哈麗(ハ・レイ)いいます。中国人ネ。とてもよろしくネ。」

こうしてまた新たな仲間が加わったのでした。


旅人達の旅は続きます。


旅人達は川を越え丘を越えどんどんと南へ旅を続けるのでした。
ある日、旅人達は手持ちの食料が底を尽きそうになったので砂漠の中にポツンと現れた小さな村へ寄ることにしました。
村に入り、広場まで来ると、元口兄は村人達に大きな声で呼びかけました。「私達は旅人です。どなたか水と食料を少しばかり分けて頂けないでしょうか!」
すると白いヒゲを生やした一人の老人が旅人達の前に現れたのでした。
「ようこそ村へお越し下さいました。私はこの村の長老です。 長旅でお疲れでしょう。 どうぞこの村でゆっくりと休息なさるがよい。 
ただ、この村では水はとても貴重なものです。 コップに一杯づつしかお渡しできませんが、辛抱してくだされ。」と言って旅人達一人ひとりに水の入ったコップを渡しながら回るのでした。 
長老がビエムにコップを渡そうとしたときです。
「おぬし、そ・そのペンダントは…どこでそれを… ま・間違い“虹の欠片”じゃ…」
ビエムは自分の首にかけられたペンダントを手に取り「えっ?これですか、これは祖母の形見ですが、これが何か?」と聞き返した。
すると長老はゆっくりと話し出したのでした。
「遥か昔、この地に偉大なる預言者フュージョンと呼ばれる者がおったのじゃ。
フュージョンは云われた“いつの日かこの地に『虹の欠片』を持つ旅人と『砂のオアシス』を持つブックライスフィールド兄弟と呼ばれる東洋人の4人組が現れるだろう。
『虹の欠片』と『砂のオアシス』が重なりあった時、この地に眠る“大いなる財宝”のありかを示すであろう。」
長老がそこまで話した時、村の入り口の方から数頭の馬の蹄の音が聞こえたのでした。
全員が村の入り口に目を向けると、そこには馬に跨がった4人の若者が立っていたのでした。
その内の1人が馬から降りてこちらに向かって歩いて来ました。
そして長老の前きて言いました。

「俺達はブックライスフィールドと呼ばれる者だけど。あんたがこの村の長老さんかい?」
長老は「そうじゃ、私がこの村の長老じゃ。」と答えたのでした。
するとその若者は「俺達のじっちゃんの遺言を伝えにきた。」と言って、若者はとても愉快に話し出すのだった。
「実は俺達のじっちゃんが以前この村でお世話になったそうなんだ。 ある日、地質学者だったじっちゃんはこの村のはずれで地質調査をしてたんだってさ。
そこでじっちゃんは偶然、ある二つのブツを発見したんだ。 だけどその時じっちゃんは突然の砂嵐に襲われて砂の中に生き埋めになったんだってさ。 
ほんとやばかったんだって。 でも運のいいことに、当時この村に住んでいたドイツ人の女性がじっちゃんを見つけて村に運び、必死の看病をしてくれたおかげで、じっちゃんは命を救われたんだって。 
そんでもってじっちゃんは当然のごとく、そのドイツ人の女性と恋に落ちたんだってさ。はははっ」

若者は一気にしゃべってノドが渇いたのだろう、元口の手に握られたコップを奪って水を一気に飲み干したのでした。
それを見ていた長老は「若者よ! この村では水はとても貴重なものなんじゃ! なんて罰当たりな事をするんじゃ!」と叱ったのであった。
若者は「まぁまぁ、今から良い話をするから聞きなって!」と言って話の続きをはじめたのでした。
「えっと、どこまで話したっけ?そうそう、じっちゃんとドイツ人の女性がお互いに惚れちゃったとこまでだったね。 
そんでさ、ある日じっちゃんは地質調査で見つけた二つのブツの使い方がわかったんだってさ。丘の上の神殿に書かれた古代文字を解読したんだって。
だけどこっからがじっちゃんのかわいそうなとこなんだ。 その神殿で古代文字を解読したじっちゃんは急いで村へと戻ろうとしたんだ。 
だけどその時、何百という槍がじっちゃんめがけて降り注いだんだって。 そう、それが後に世界中を巻き込むほどに広がった戦争の始まりだったのさ。 じっちゃんは必死で逃げた。
手には地質調査の時に見つけたブツを持ったままだ。もう一つのブツは村にいるドイツ人の女性に預けたままだったんだって。
そんでもってじっちゃんは命からがら自分の国へとたどり着いたんだってさ、でもじっちゃん、戦争で足を失っちゃたんだよね。それで二度とギリシャのこの地を踏むことができなかったんだよ。
結局じっちゃんは生涯でいっちゃん愛した女性にも二度と逢うことはできなかったん
だってさ。じっちゃんはそのドイツ人女性と二人が出会ったこの村を本当に愛してたんだって。そんでじっちゃんは何とかしてこの村に対してお礼がしたいと言って。
死ぬ間際これを俺達兄弟に託したのさ。」と言って若者は懐から古びた銀の杯を出して長老に手渡したのでした。
「それともう一つのブツはドイツ人のエムルグ家を尋ねればたぶん手に入るって、じっちゃんは言ってたよ。 二つのブツを重ねたらこの村にとって最高のものが手に入るってさ! 
じゃ、確かに渡したからね! ほんじゃね〜!」と言って若者は立ち去ろうとした。
「ちょっと待ちなされ!」と長老は若者を呼び止めた。
長老はビエムにペンダントを貸してくれるように頼みました。
そして「若者よ!せっかくじゃ、そこで今から起こる奇跡を見ていきなされ。」と言ってペンダントと銀の杯を重ね合わせたのでした。
するとペンダントに付いている宝石に太陽の光が一気に集まり、宝石から放たれた七色の光は銀の杯に向かって伸び、杯の中心から鋭い一筋の光が村の中央の地面を射したのでした。
その場にいた者全員は突然の出来事に驚き、皆顔を合わせるのでした。

そして長老は若者に向かって叫んだのでした。「若者よ! そなたの祖父の心意気、確かに受け取った!」
すると若者は「いいもん見せてもらったよ! 長老のじーちゃんも長生きしろよ!!」と言って馬に跨がり兄弟達と共に村を後にしたのでした。

元口達旅人も長老にお礼を言ってブックライスフィールド兄弟の後を追ったのでした。
ブックライスフィールド兄弟に追いついた元口達は兄弟達に聞きました。
「結局“大いなる財宝”とは何だったんですか?」
すると若者は「たしか元口さんでしたよね? この地で最も重宝されるものって何だと思います?」と聞き返した。
「さぁ何でしょう? やっぱり金銀財宝ですかね。」と元口兄は答えた。
すると若者は「いや、この地では金銀よりももっと大事な物があるのですよ。長老のじーちゃんも言ってたでしょ。 
ほとんど雨が降らないこの地では金銀よりもはるかに水の方が価値があるんですよ。地質学者だった俺達のじっちゃんはブツを見つけた時に気づいたんだって、あの村の地下には大きな水脈があるってことを。 
つまりお宝は水ってことですね。はっはっは」と若者は笑いながら答えたのでした。

「なるほど、あっそれともう一つ質問なんだけど、しゃべる言葉からすると君達は日本人だよね? でもなぜブックライスフィールド兄弟と呼ばれているんだい?」と元口兄は聞いたのでした。
「元口さん、ブックライスフィールドを日本語にするとどうなります?」とまたまた若者は聞き返すのであった。
「日本語ですか?ブックは…本ですかね…ライスフィールドは米の地?あっ、田んぼってことですか? ってことは本…田… あっ!もしかして本田さんってことですか?」
「はっはっは! 正解! 俺達は本田兄弟ってことですよ!」と若者は笑うのであった。

「ところで元口さん、皆さんはどちらへ向かってるんですか?」と今度は若者の方から聞いてきました。
すると元口兄は「私達はアルカディアという理想郷を目指しているのです。 そこはいろんな望みを叶えてくれる神様がいる所なんですよ。」
若者は「へ〜なかなか面白そうな所ですね。俺達も一緒についていっていいですかね?」と言ったのでした。
こうしてブックライスフィールド兄弟という4人の新しい仲間も加わったのでした。


旅人達の旅は続きます


ある日旅人達は広大に広がる草原を歩いていました。
すると東の方角からものすごい勢いで馬を走らせてこちらに向かってくる二人の男がいました。よく見ると馬の後ろからはライオンが追いかけてきています。
「あの馬乗りを助けなければ!」と元口兄は言いました。
すると哈麗が「私にまかせるネ」と言って、ライオンの方に向かって馬を走らせました。
哈麗は旅人達が聞いたことのない言葉をライオンに向かって叫んでいます。
すると今まで猛烈な勢いで追ってきていたライオンは足を止め、後ろに振り返り戻っていきました。
哈麗は言いました。「私、動物とお話できるあるヨ。あのライオンは昔、子供をハンターに襲われたことがあるみたいネ。それでとても人間が怖いある。
だから自分の家族を守るために人間が来るたびに追いかけて家族から離れさすあるネ。」
「哈麗はさっきライオンに何て言ったの?」と山葉は聞きました。
「この人たちはハンターじゃないあるヨ。だから安心して家族の元に帰りなさいネ。」っていったあるヨ。哈麗は笑顔で答えました。

ライオンに追われていた二人の男も日本人の旅人でした。
二人はみんなに助けてもらった事をとても感謝しました。
河崎さんと鱸(すずき)さんと名乗る二人は旅をしながら、自分達の父親を探していると言いました。
河崎さんはゆっくりと話し出しました。「私達の父親もあなた達と同じ旅人でした。

10年前のある日、以前から仲の良かった私の父と鱸(すずき)さんの父は突然ギリシャにあるアルカディアという理想郷へ行くと言って家を出たきり戻ってこなかったのです。
それでも母はいつか元気な顔で戻って来ると信じて日本で父の帰りを待ち続けているのです。10年たった今でも母はいつ父が帰ってきてもいいように毎日食卓に父の分の食事を用意しているのです。 
ですから私達は母のためにも父親達を見つけたいのです。」
すると元口弟は「私達も今、アルカディアに向かって旅をしています。もしよければ一緒に旅をしませんか?」と二人に聞きました。
「ありがとうございます。沢山の人達と旅ができればとても心強いです。ぜひご一緒させてください。」と二人は答えたのでした。


旅人達の旅は続きます。


ある日旅人達は大きな洞窟の入り口へとやってきました。その洞窟はとても暗くて不気味でした。
しかしこの洞窟を通らなければアルカディアへは行けそうもありません。
旅人達は勇気をふりしぼって洞窟の中へと入って行きました。

たいまつの明かりを頼りにどんどんと洞窟の奥へと進んで行きました。
しばらくすると洞窟の中の広い空間にたどり着きました。
たいまつで照らしながら出口を探しているとなんとそこには壁面一杯に絵が描かれていました。
その絵は馬に似ているようですが何か違うような気がします。
全員が絵に気を取られていると、ガタッと背後で何かが動く音がしました。
みんなは驚いていっせいに振り返りました。
すると岩陰から一人の男が現れました。
「ユー達!ここで何しとん!」と男はへんてこな日本語で聞いてきました。
元口兄が一歩前に出て「私達は旅人です。行き先のアルカディアという所へ向かうにはこの洞窟を通らなければならずここに迷い込んでしまいました。
どなたか存じませんが、この洞窟から抜ける道を教えてもらえないでしょうか。」と言いました。
すると男は「そら、大変でしたな。この左側の壁に手を当てたまま進めばユー達は出られるばい」と、これまたおかしな日本語で答えたのでした。
「ありがとうございます助かりました。 ところでここに描かれている絵はあなたが描いたのですか?」と今度は元口弟が尋ねると
男は「イエス!私が山盛り一杯書いたス」と答えた。
今度は哈麗が「とてもお上手あるネ! だけどこの絵って馬に似てるようで似てないあるネ?」と言いました。
すると男は「これはただの馬ではナッシング! ベリーベリー珍しい鉄馬ですたい!」と自慢気に言うのであった。

男の話によると彼は2年ほど前にこの洞窟に迷い込んできたという。ひと月ほどかかってやっとこの洞窟の出口を見つけたのだが、そこで彼はどう猛なうなり声を上げる二頭の鉄馬を見たのだ。
その強烈な印象を受けた鉄馬を彼はどうしても得意の絵に残したいと思い、すぐさま彼は洞窟に戻ってきて目に焼き付けた鉄馬をこの壁面に描き続けていたのだという。

鱸(すずき)はその少し変わった日本語を話す男に「絵はもう完成しているみたいだね。もしよければ君も私達と一緒にアルカディアを目指さないか?」と誘ってみた。
すると男は「足袋は靴ずれ世は情けない。 ぜがひでもミーを一緒に連れていっておくんなはれ」と、答えたのであった。
こうして日系人のビユ榎瑠(える)と名乗る新しい仲間も加わったのでした。
そしていくつもの苦労の末、旅人達とうとうは理想郷アルカディアへとたどり着いたのでした。
しかし長旅で衰弱しきっていた旅人達の馬達はみんな息を引き取ったのでした。
旅人達は悲しみ嘆きました。
するとどこからともなく神様が現れたのでした。
「旅人達よ、よくぞこの地までたどり着いた。 褒美にお前達の望みを叶えてしんぜよう。」と神様は言いました。
すると元口兄が神様の方へ歩んでいき、言いました。
「この地にたどり着くまでに数々の苦労を共にした私達の愛馬はみんな息を引き取りました。 どうか神様、私達の愛馬を甦らせてもらえないでしょうか。」
すると神様は「確かにワシは全能の神じゃが、運命を全うしたものの命を甦らすことはできんのじゃ。じゃがお前達がこれから先も旅を続けるのであれば馬は必要じゃ。

そこでお前達には永遠の命を持つ鉄馬を授けてやろう。」
そう言って神様は両手を大空に向かって広げました。
すると今まで明るかった空が突然暗くなり夜空に変わったのです。
その夜空には今まで誰もが見たことがないほどの沢山の星が輝いていました。
そして神様は「さあ、旅人達よ! 受け取るがよい!」と言って両手を地面に振りかざしました。
すると夜空に輝いていたいくつもの星が流れ星となって地上に降り注いだのです。
流れ星は地上に落ちた瞬間、強い光とともに弾け、そこには今まで見たこともない鉄でできた馬が現れたのでした。
その中の一頭の鉄馬にはお腹の辺りにV-MAXと名前が書かれていました。
神様はその鉄馬を指差し、「山葉よ、これはお前のじゃ。この鉄馬は王跿馬偉(おうとばい)と呼ばれるものじゃ。 ずいぶんと昔からこの国では“真の旅人”にしか王跿馬偉は乗りこなせないと伝えられておる。 
じゃが、お前達なら見事その王跿馬偉を乗りこなせよう」
「哈麗よ、お前にはこの王跿馬偉を与えよう。」
哈麗にはHarley-Davidsonと書かれた王跿馬偉が渡されたのでした。 同じく元口兄弟にはそれぞれMoto Guzziと書かれた王跿馬偉が、
ブックライスフィールド兄弟の4人にはそれぞれX4・X11・CB1100F・CB1300SFと書かれた王跿馬偉が渡されました。 
そしてビユ榎瑠(える)にもBuellと書かれた王跿馬偉が、ビエムにはBMWと書かれた王跿馬偉が与えられたのでした。
最後に神様は「鱸(すずき)と河崎よ、お前達の父親も二年ほど前にこの地にたどり着きおったわ。そしてこれと同じものを与えてやったのじゃ、じゃがやつらには旅は向いとらんのぉ、
この地に着くのに10年もかかりおったわ。じゃからやつらには国に帰るように言ってやったわ。ふぉっふぉっふぉ」と言って二人にはGSX400Rと書かれた王跿馬偉とZEPHYR1100と書かれた王跿馬偉が与えられたのでした。
こうして旅人達全員は素晴らしい鉄馬を手にすることができたのでした。

すると神様はゆっくりと空へと昇りながら言いました。
「旅人達よ、これだけは覚えておくがよい。この地のことを多くの者は理想郷と呼ぶが、それは間違いじゃ。理想郷というのは常に人々の内側に存在するのじゃ。
ただ、この地にたどり着いた者は少しだけ自分の内にある理想郷に近づけたということじゃ、じゃが理想郷に終わりはない、永遠に果てしなく続いておる。
いつか自分自身が納得できる理想郷に出会えるまでいつまでも旅を続けるのじゃ。」そう言い残して神様は星空へと消えていったのでした。


旅人達の旅はいつまでも続きます。

                                おわり

あとがき

なっかん童話『旅人達』いかがでしたでしょうか?
最初、この童話を書き始めるまでは、ツーレポと違って好きなこと書いたらええんやし、楽勝楽勝!と思っていたのですが、ところがどっこい、これが難しいのなんのって! 
特に難しかったのはアルカディアのメンバーを全員登場させるって事と話のつじつまを合わせるのに苦労しました。(所々話のつじつまが合ってない箇所も…)。
何度も何度も挫折しかかったのですが、先日いっしゃんに途中まで読んでもらったところ「おもろいやん!」なんとか次の会報に載せてや!と励まされ、どうにか書上げる事が出来ました。(感謝)
まだまだ文体などメチャメチャで読んでてわけわからん!と言われる方もいらっしゃると思いますが、少しづつ文章力を身につけていきたいと思いますので、応援してちょんまげ(死語)

近い将来、京都の新鋭作家として文壇にデビューしますので夜露死苦!!(族語)


                                                                                                                              Vol8